ありがとうございます。それでは、日本、米国、中国、韓国、EU諸国を中心に、世界のドローン規制の現状を比較し、日本の規制が厳しいのかどうかを評価します。また、日本の航空法を中心に、関連する法律を詳細に分析し、その他注意が必要な法規も紹介します。さらに、各国のドローンの活用事例を調査し、日本が参考にできるポイントを抽出します。その上で、一般国民にとってメリットのあるドローンの利活用を促進するために必要な施策について提案を行います。調査が完了しましたら、結果をご報告いたします。
世界のドローン規制の現状比較
近年、各国でドローン(無人航空機)の利活用が急速に進む一方、安全確保のための法規制も整備されています。本稿では、日本、米国、中国、韓国、EU諸国を中心にドローン関連の規制状況を比較し、日本の規制の厳しさや課題について評価します。また、商業利用や農業、防災、物流などの活用事例を紹介し、日本における効果的なドローン活用のための規制のあり方と政策提案を行います。
各国のドローン規制の概要
日本のドローン規制
日本では航空法に基づきドローン(「無人航空機」)の飛行ルールが定められています。まず機体登録について、日本は100g以上の機体を無人航空機として登録義務の対象としていますwww.k-dots.jppilotinstitute.com。これは多くの国で一般的な250gより厳しい基準で、100g以上のドローンは屋外で飛行させる際に国土交通省への登録が必要ですwww.k-dots.jppilotinstitute.com。登録後、機体には登録記号の表示も義務付けられますpilotinstitute.com。
飛行可能空域と許可制度について、日本では以下の空域で原則飛行禁止となっており、事前に国土交通大臣の許可を得なければなりませんnnaglobalnavi.compilotinstitute.com:
- 空港周辺の上空(進入表面等)nnaglobalnavi.com
- 人口集中地区(DID)上空nnaglobalnavi.compilotinstitute.com
- 地表から150m以上の高さの空域nnaglobalnavi.compilotinstitute.com
- (一時的に指定される)災害時等の緊急用務空域nnaglobalnavi.com 上記の空域(空港周辺、人口集中地区、高度150m超など)では、レジャー目的・商用目的を問わず許可なしでの飛行は禁止されていますpilotinstitute.com。加えて、重要施設周辺の上空も「小型無人機等飛行禁止法」により飛行禁止区域となっており、国会議事堂や原子力発電所周辺等での飛行は別途警察庁長官等の許可が必要ですnnaglobalnavi.com。
基本飛行ルールとして、日本の航空法では以下のような安全ルールを定めていますwww.drone-press.jppilotinstitute.com:
- 夜間飛行の禁止(夜間に飛ばす場合は事前に承認が必要)www.drone-press.jp
- 目視内(操縦者から肉眼で見える範囲)での飛行www.drone-press.jp
- 人や建物から30m以上の距離を確保www.drone-press.jppilotinstitute.com
- 催し物上空の飛行禁止www.drone-press.jp
- 危険物の輸送禁止、物件投下の禁止www.drone-press.jp これらのルールに反する飛行(例:夜間や目視外、第三者近接、催事上空など)は「承認」を申請し特別に認められない限り行えませんwww.drone-press.jp。2022年12月の航空法改正施行により、有人地帯での目視外飛行(いわゆる「レベル4飛行」)が解禁されましたが、これは機体の型式認証および操縦者の技能証明(ライセンス)取得を要件に、これまで禁止されていた市街地上空の飛行を可能とするものですwww.kantei.go.jpdrone-journal.impress.co.jp。日本はこの改正でドローンの本格的な免許制度を導入し、一等無人航空機操縦士(レベル4対応)と二等無人航空機操縦士(それ以外)という国家資格によって、危険性の高い飛行を許可制の下で解禁しましたnnaglobalnavi.comnnaglobalnavi.com。
その他関連法規として、電波法によりドローンに搭載する無線機器の技適認証や免許が必要な場合があるほか、カメラ搭載ドローンによる撮影についてはプライバシー保護の観点から総務省がガイドラインを公表していますnnaglobalnavi.com。また、多くの自治体で公園や河川敷でのドローン飛行を制限する条例が定められており、飛行場所によっては地方自治体の許可も必要です。
米国のドローン規制
米国では連邦航空局(FAA)がドローン規制を所管しており、商業利用の場合はFAAの14 CFR Part 107規則に従う必要がありますreamo.nedo.go.jpreamo.nedo.go.jp。レクリエーション(趣味)目的の場合は一部異なる扱いがあります。具体的には、米国は長らく商業利用とホビー利用を法律上区別しており、2016年施行のPart 107は有償・業務目的のドローン運航ルールを規定しましたdronelife.com。Part 107では操縦者資格(リモートパイロット証)の取得が必要で、夜間飛行や目視外飛行、人物上空飛行は禁止(ただしFAAにWaiver申請して個別許可を得れば可能)という内容ですreamo.nedo.go.jpreamo.nedo.go.jp。飛行可能空域は原則として400フィート(約122m)以下に制限され、空港周辺の制限空域で飛行するには事前にオンラインシステム(LAANCなど)での空域承認が必要ですwww.k-dots.jp。一方、ホビー目的の飛行については、2018年まで適用除外規定(いわゆるSection 336)がありコミュニティベースのガイドライン遵守が求められるに留まっていましたdronelife.com。現在はホビー利用者も空港近くで飛ばす際は許可取得が必要ですが、依然として商業利用に比べ手続は簡易ですdronelife.comdronelife.com。米国は機体登録については0.55ポンド(約250g)以上のドローンに登録義務がありますwww.k-dots.jp。また2023年9月以降、米国では重量に関わらずほぼ全ての屋外飛行ドローンにリモートID(機体識別信号の発信)を義務づけるルールが施行され、違反時は飛行禁止となります。
総じて米国のドローン規制は「基本ルールの下で自主運用させ、リスクの高いケースのみ個別許可」というアプローチで、特にBVLOS(目視外)や人・群衆上空の飛行は現行規則では原則禁止ですが、多数の実証実験を経て今後の規制緩和(新しいPart 108の制定など)も検討されていますreamo.nedo.go.jpreamo.nedo.go.jp。
中国のドローン規制
中国では急速なドローン産業の発展に伴い、包括的なドローン規制の整備が進んでいます。2018年に中国民用航空局(CAAC)が「無人操縦航空機飛行管理暫定条例」の草案を公開し、検討を重ねた後、2023年5月に同条例が公布、2024年1月1日施行となりましたdl.ndl.go.jp。この条例により、ドローンの機体性能と用途に応じた細かな分類と、それぞれに必要な資格・許可・遵守事項が定められていますdl.ndl.go.jp。
中国の制度ではドローンを5つの重量カテゴリに区分しています(微型・軽型・小型・中型・大型)dl.ndl.go.jpdl.ndl.go.jp。例えば微型(マイクロ)ドローンは250g未満で高度50m以下・時速40km以下に限定され、いつでも手動操作が可能なものと定義されますdl.ndl.go.jp。この微型ドローンは管制空域外であれば許可不要で飛行可能ですが、機体は識別信号(リモートID)を自動発信する義務がありますdl.ndl.go.jpdl.ndl.go.jp。次の軽型は重量4kg以下・高度50m以下などの基準があり、こちらも管制空域外で飛行可能とされていますdl.ndl.go.jp(※軽型もリモートID要件等は課されるとみられます)。小型(15kg以下・最大離陸重量25kg以下)は一定のリスクがあるため機体の保険加入や操縦者の免許取得が必要とされていますdl.ndl.go.jp。さらに中型(150kg以下)・**大型(150kg超)**では、民用航空当局からの認可やより厳格な免許・保険加入義務が課されますdl.ndl.go.jp。このように、中国は重量や性能に応じて段階的に規制水準を上げるリスクベースのアプローチを採用しており、小型までは比較的簡易な手続きで飛行できる一方、大型になれば有人航空機に準じた扱いとなりますdl.ndl.go.jpdl.ndl.go.jp。
また中国では実名登録制度も早くから導入されており、一定重量以上のドローンはオンラインシステムで所有者情報を登録しなければ飛行できません。飛行禁止区域としては空港周辺や都市上空などが規定され、無許可飛行や違反行為に対する罰則も強化されていますdl.ndl.go.jp。中国政府はドローンを経済成長を牽引する「低空経済」の一翼と捉えており、規制で安全を確保しつつ産業振興を図る姿勢ですdl.ndl.go.jp。
韓国のドローン規制
韓国もドローン産業の育成に積極的で、法整備と規制緩和を進めてきました。韓国の航空関連法では、ドローンは「超軽量飛行装置」の一種である「無人飛行装置」に分類されます(※燃料除く機体重量150kg超の場合は「無人航空機」として扱われ、有人航空機に準ずる)dl.ndl.go.jp。韓国の特徴は機体重量と用途(事業用か否か)によって必要な手続きが細かく規定されている点ですdl.ndl.go.jp。例えば、機体重量12kg以下のドローンで非事業用途(ホビー用途)であれば、機体の届け出や操縦資格取得といった手続きは不要とされていますdl.ndl.go.jp。一方で事業用(商業利用)となると、重量に関わらず原則として機体の登録・事業者登録・保険加入が義務づけられ、さらに12kg超の機体を事業利用する場合は操縦者資格(満14歳以上対象)の取得も必要になりますdl.ndl.go.jp。特に25kg超の大型機を商業利用する場合は、安全性認証(機体の型式検証)も含めた全ての項目が義務となり、規制が最も厳しくなりますdl.ndl.go.jp。このように韓国は小型でリスクの低いホビードローンには寛容で、重量12kg以下なら商用でも免許不要とする代わりに、重量が増すにつれ急速に規制を強化する方式を採用していますdl.ndl.go.jp。
飛行禁止区域や高度制限も整備されています。韓国では飛行制限区域(主に軍事施設周辺や空港周辺)が指定されており、そうした区域や高度150m以上で飛行させる場合は国土交通部長官の承認が必要ですdl.ndl.go.jp。またドローン操縦者は飲酒操縦の禁止や物件投下禁止など、日本と類似した安全遵守事項を守る義務がありますdl.ndl.go.jp。韓国政府は2017年・2019年に相次いで関連法を改正・制定し、夜間・目視外飛行の解禁(一定条件下)dl.ndl.go.jpや、ドローン産業の基盤整備・活用促進のための基本法制定dl.ndl.go.jpなど、産業振興と規制緩和に取り組んでいます。
欧州(EU諸国)のドローン規制
EU諸国では2021年以降、欧州航空安全機関(EASA)による統一ルールが適用されています。EU共通の規則「EU Regulation 2019/947」に基づき、リスクに応じてOpen(オープン)・Specific(特定)・**Certified(認証)**の3つのカテゴリーに分けてドローン運用を規制する枠組みですreamo.nedo.go.jppilotinstitute.com。アイスランドやノルウェー、スイスなどEU域外の一部欧州諸国もこのEASAルールを採用していますpilotinstitute.com。
-
Openカテゴリ: リスクが低い飛行(主に目視内かつ安全な条件下)。追加の許可なしで飛行可能な範囲の一般ルールを定めていますreamo.nedo.go.jppilotinstitute.com。OpenはさらにA1/A2/A3のサブカテゴリに細分され、機体重量や人との距離に応じた制限があります(例えばA1は~250g以下なら人の上空飛行可、A2は4kgで一定距離必要、A3は25kgで人や住宅から遠くで飛行等)。
-
Specificカテゴリ: 中程度のリスクがある飛行で、Openで許可されない飛行(例:目視外や一定の上空高度、多人集中地域上空など)を行う場合に適用reamo.nedo.go.jp。オペレーター(操縦者または法人)は事前にリスク評価を実施し、当局から個別の運航認可を取得する必要があります。ただし典型的なシナリオについては欧州共通の「標準シナリオ」が用意されており、それに合致する場合は簡易な手続きで許可が得られる仕組みです。
-
Certifiedカテゴリ: 人の輸送(有人ドローンやエアタクシー)や大型貨物輸送など、高リスクのドローン運航に関するカテゴリですreamo.nedo.go.jp。有人航空機に近いレベルの機体認証や操縦者ライセンス、運航審査が必要となり、事実上「無人航空機版の航空機運用」として厳格に管理されます。 EUでは機体登録およびオペレーター登録も義務化されています。原則として250g超またはカメラ搭載のドローンを扱う操縦者は当局に登録し、登録番号を機体に表示する必要があります。またOpenカテゴリでもA1/A3飛行にはオンライン講習・試験、A2には追加の筆記試験と実地訓練が要求されるなど、操縦者には一定の知識習得が義務づけられていますdronelife.com。飛行可能高度は統一的に120m以下と定められwww.k-dots.jp、空港周辺の制限、第三者上空禁止など基本的な安全ルールは各国共通です。各国はこのEU基本規則の範囲内で必要に応じ付加的な禁止空域(例えば国防上重要な施設周辺や都市公園の飛行禁止など)を設定できますが、基本的な枠組みはEU全域で標準化されています。
なお、イギリスはBrexit後に独自のルールを運用していますが、基本的にはEU時代の区分(Open/Specificなど)を踏襲しており、大きな違いはありません。フランスやドイツといった主要国も現在はEASAルールに則っています。例えばフランスは早くからドローン免許制や登録制度を導入していましたが、現在はEU統一免許(オープンカテゴリ用の証明)に移行しています。また欧州ではU-spaceと呼ばれるドローン用交通管理システムの整備も進められており、都市部で多数のドローンが飛行する未来を見据えた体制づくりが行われています。
ドローンの主な活用分野と各国の取り組み
世界各国で、ドローンは様々な分野で活用が進んでいます。ここでは商業利用(産業用途)、農業、防災(災害対応)、物流(荷物配送)、その他の活用例に分けて現状を概観します。
-
商業利用(産業全般): 空撮映像制作やインフラ点検、測量・マッピング、警備監視など、幅広い産業分野でドローンが使われています。米国では映画・テレビ撮影にドローンが欠かせない存在となり、FAAの許可制度を通じて多くの商業パイロットが活動しています。日本でも測量や建設現場での進捗管理(いわゆるi-Construction)にドローンを活用する例が増えています。中国では警察や都市監視へのドローン導入が進み、大都市での交通監視や違法建築の巡視などに活用されています。また各国でインフラ点検(橋梁や送電線、プラント設備の検査)にドローンを使うことで、人が立ち入れない危険箇所の点検を安全かつ効率的に行う事例が増えています。
-
農業: ドローンは農業分野で特に活用が進む分野の一つです。日本は1980年代から無人ヘリによる農薬散布を行ってきた実績があり、近年はそれが電動ドローンに置き換わる形で水稲の農薬散布や肥料散布が広範囲に行われています。農林水産省の調査によれば、農業用ドローンの普及に伴い農薬散布の受託サービスも各地で拡大しており、高齢化する農家の負担軽減に寄与しています(省力化・低コスト化)www.maff.go.jpmazex.jp。中国でも広大な農地での農薬噴霧にドローンが活躍し、DJI社が農業ドローン市場で世界的シェアを持っています。米国や欧州でも精密農業の一環として、ドローンで圃場を空撮し作物の生育状況を解析したり、ピンポイントでの散布を行う試みが広がっています。ただし農薬散布に関しては各国で航空法以外に農薬取締法などの規制も関係するため、運用には適合機体の使用や資格取得(日本では農薬散布用無人ヘリのオペレーター資格制度が存在)が必要です。
-
防災・災害対応: 災害現場でのドローン活用も年々増加しています。日本では豪雨や地震の被災地で、上空から被害状況を即時に把握するため自治体がドローンを飛ばす例が多く見られますwww.sompo-ri.co.jp。例えば2020年7月の熊本豪雨では、ヘリが飛べない悪天候下で県が協力企業に依頼してドローン空撮を実施し、孤立集落の状況把握に成功したケースがありますwww.sompo-ri.co.jp。また、河川決壊や土砂崩れの危険箇所をドローンで上空から監視し、リアルタイムで映像共有することで被災マップを迅速に作成できるとの報告もありますwww.mirait-one.com。米国でもハリケーン被災地で保険会社がドローンを飛ばして家屋被害を査定したり、消防が山火事の状況把握にドローンの熱画像カメラを用いるなどの活用があります。さらに近年は**捜索救助(SAR)**分野でも、行方不明者の捜索に赤外線カメラ搭載ドローンを投入したり、洪水で孤立した人に対しドローンで救命胴衣や医薬品を投下する試みも行われていますwww.jackery.jp。各国とも災害時には有人ヘリ等の投入が難しい状況でドローンが代替手段として期待されており、平時から防災訓練に組み込む動きが見られます。
-
物流(荷物配送): ドローンによる宅配・物資輸送も注目度の高い分野です。米国ではAmazonやGoogle Wingによる小包配送の実証実験が行われ、一部地域で限定的な配送サービスが開始されています。FAAはこのためにPart 135(航空運送事業)の枠組みで特別に無人機事業認可を与える形をとっており、UPS社が医療物資の定期配送にドローンを用いるなどの事例があります。欧州でもアイルランドのManna社が食品デリバリーを試験運用したり、スイス郵便が山岳地帯で医薬品輸送にドローンを使う実験を成功させています。中国は広大な農村や離島地域への配送にドローンを投入しており、JD.com(京東)が農村部で宅配サービスを展開した例や、安徽省で血液を輸送した例などがあります。日本ではこれまで規制上、市街地での配送は困難でしたが、前述のレベル4解禁により2022年末から法律上可能となりましたdrone-journal.impress.co.jp。それ以前から国家戦略特区などを活用し、離島や山間部での試験配送は多数行われています(例:2016年の千葉市実証実験での宅配や、楽天と自治体の協力による山間部集落への日用品配送)drone-journal.impress.co.jp。今後、日本でも人口密集地でのオンデマンド配送が検討されており、人手不足解消や物流コスト削減への寄与が期待されていますwww.mirait-one.com。もっとも、有人地帯上空での安全確保や住民受け入れ、飛行経路の管理など課題も多く、当面は限定されたエリアでの試行から段階的に拡大する見通しです。
-
その他の活用: 上記以外にも、ドローンの用途は広がり続けています。エンターテインメント分野では、群飛ドローンによるライトショーが世界各地で開催され、花火の代替やイベント演出として活用されています。中国やロシアでは数千機規模の編隊飛行による夜空のショーが記録を打ち立て、日本国内でも大規模イベントでのドローンショー事例が増えてきました。環境分野では、野生動物の生態調査や密猟監視、森林火災の早期発見などにドローンが使われています。沿岸国では漁業取締や海難救助支援にもドローンを投入するケースがあります。さらに、将来的な都市空間の利用として**エアモビリティ(空飛ぶクルマ)**への関心も高まっており、これは大型ドローン(乗員搭載型)の延長線上にある技術ですが、一部で有人ドローン試験飛行が始まっています。総じて、ドローンは小型カメラから大型の有人機まで多様化しつつ、あらゆる領域で効率化・省力化のツールとなりつつあります。
日本のドローン関連法規制の詳細分析
上述したように、日本におけるドローン規制の中心は航空法です。2015年の航空法改正でドローン(無人航空機)が初めて明確に規制対象となり、その後も技術進展に合わせ改正が重ねられてきました。ここでは航空法を中心に、日本のドローン関連の法規制をもう少し詳しく見てみます。航空法第11章(無人航空機): 航空法第132条以下に無人航空機の定義、登録、飛行禁止空域、飛行方法、許可・承認制度、罰則などが網羅されていますnnaglobalnavi.com。無人航空機の定義は「本体重量が100g以上で、遠隔操作または自律飛行により飛行できる機体」とされ(2019年改正で200gから100gへ引下げ)、100g未満のものは航空法の適用外ですpilotinstitute.com。飛行禁止空域(空港周辺、150m超、DID等)や飛行方法の制限(夜間禁止など)は前述の通りですが、2022年改正では特に**「特定飛行」**の概念が導入されましたnnaglobalnavi.com。特定飛行とは、人または物件に対する危害リスクが高い以下の飛行を指しますnnaglobalnavi.com:
- 夜間飛行
- 目視外飛行(補助者による監視もない場合)
- 人(第三者)または建物上空の飛行
- 人または建物との距離が30m未満となる飛行
- 催し場所上空の飛行 等(航空法施行規則で列挙) 従来、これらの行為は禁止または個別許可制でしたが、改正航空法では特定飛行を包括的に定義した上で、機体認証(第一種・第二種)と操縦者技能証明(一等・二等)という新たな制度を設けました****nnaglobalnavi.com****nnaglobalnavi.com。具体的には、特定飛行に該当しない通常の安全飛行は誰でも可能ですが、上記1~5すべてに該当しない飛行のみを行う者は従来通り技能証明は不要です(=従来の「無資格でも飛ばせる範囲」)。一方、一つでも該当する特定飛行を行うには、原則としてドローンの機体ごとに安全性について国土交通大臣の型式認証(あるいは個別機体認証)を取得し、操縦者も該当する等級の技能証明(一等または二等)を取得している必要がありますnnaglobalnavi.comnnaglobalnavi.com。例えば、有人地帯で補助者なしの目視外飛行をする場合(一番ハイリスクなレベル4飛行)は一等操縦士かつ第一種機体認証が要求され、山間部での目視外飛行(レベル3)なら二等操縦士と第二種機体認証が必要、という具合ですnnaglobalnavi.comnnaglobalnavi.com。この制度により、日本も欧米と同様に国家資格による操縦者管理と機体の認証制度が整備され、安全性を確認された人・機体に限って高リスク飛行を認める仕組みとなりました。
無人航空機の登録制度: 2022年6月20日施行の改正航空法で開始された制度で、100g以上の機体は機体情報や所有者情報をMLITの登録システムに申請し、発行された登録記号を機体に表示しなければ飛行できなくなりましたpilotinstitute.com。登録有効期間は3年で、変更や抹消も届け出が必要です。登録した機体にはリモートIDの搭載(または送信機の装着)義務が課され、2022年以降新規に登録した機体は基本的に即リモートID送信を要求されていますpilotinstitute.compilotinstitute.com。この登録・リモートID制度により、飛行中の機体から発せられる信号を傍受すれば所有者を特定できるようになり、悪質な違反飛行への抑止や事故時の原因究明に資する体制が整いました。
小型無人機等飛行禁止法: 2016年施行。国会議事堂、首相官邸、皇居、原発、自衛隊基地、米軍施設など国家の重要施設周辺でのドローン等の飛行を禁止する法律です(上空300m未満の範囲)。イベント開催時の会場周辺も対象に追加されており、大規模国際会議や東京五輪の会場周辺も一時的に飛行禁止となりました。本法に違反して飛行させた場合、航空法とは別に懲役または罰金刑が科されます。ドローンを利用したテロや不法侵入を防止することが目的で、許可権者は警察本部長または公安委員会となっていますnnaglobalnavi.com。
電波法: ドローンの無線操縦や映像伝送には2.4GHz帯や5.7GHz帯が使われます。日本では技適マークの無い無線機器を使用することが禁止されているため、海外製ドローンでも日本の技術基準適合証明を取得したモデルでなければ使用できません。また、出力の大きい送信機や中継装置を使う場合は個別の無線局免許が必要になるケースもありますnnaglobalnavi.com。電波法違反は罰則も重いため、業務で長距離通信を行うような場合には注意が必要です。
プライバシー・その他法: ドローンによる空撮が普及したことで、他人の敷地やプライベート空間を無断で空撮することへの懸念も高まっています。現行法では明確にドローン撮影のみを規制するプライバシー法はありませんが、迷惑防止条例や軽犯罪法を適用して摘発された例があります。また他人の権利侵害(例えば無断で人を撮影し公開した場合の名誉毀損やプライバシー侵害)には従来の法律が適用され得ます。安全面では他人に怪我をさせれば民法上の不法行為責任や業務上過失致傷罪が問われますし、墜落により他人の財産を壊せば損害賠償義務が生じます。このため国交省はガイドラインで第三者賠償保険への加入を推奨しており、実際、多くの商用パイロットやホビー愛好家が保険に入っています。以上、日本の法規制は多岐にわたりますが、安全確保と産業振興のバランスを取るため近年大きく進化してきました。特に2022年の制度改正は、登録制・リモートID・免許制という世界的にも厳格な仕組みを導入しつつ、それをテコにレベル4解禁という新たな活用を可能にした点で画期的でした。
規制の厳しさの比較と日本の国際的位置
各国の規制を比較すると、日本のドローン規制は一部で「厳しい」と言われますが、その内容は多面的です。以下に主要な比較ポイントを挙げ、日本が国際的にどのような位置にあるか評価します。
-
機体登録や識別のハードル: 日本は前述のように100g以上ですべて登録義務かつリモートID必須という、かなり徹底した管理を行っていますwww.k-dots.jppilotinstitute.com。米国や欧州は登録義務を課す閾値を250gにしており、ホビー用トイドローン(200g程度)の多くは対象外ですwww.k-dots.jp。中国も250g未満の微型ドローンは比較的自由に飛ばせますdl.ndl.go.jp。このため、日本では重量わずか0.1kg超の小型機でも登録・番号表示・ID送信と手間がかかり、一般愛好家にとって負担が大きいと言えます。一方で日本はリモートIDを世界でも先駆けて義務化しておりpilotinstitute.compilotinstitute.com、これは将来の空の交通管理を見据えた先進的取り組みとも評価できます。
-
飛行禁止空域の広さ: 各国とも空港周辺と一定高度以上は原則禁止ですが、日本は加えて人口集中地区(DID)全域を許可制にしていますpilotinstitute.com。このDID指定範囲は都市部では市街地の大半を覆っており、例えば東京23区内はほぼ全域が該当します。米国では人口密集地上空の飛行は禁止されていますが、郊外の住宅地程度であれば(人や交通に直接迷惑をかけない限り)飛行自体は可能です。また米国はLAANCシステムにより空港周辺でも低高度なら即時オンライン許可が下りる場合があります。欧州もOpenカテゴリでは市街地であっても人に近づかない条件を満たせば飛行可能です(例:A1カテゴリでは小型ドローンに限り第三者上空OK)。韓国も人口密集地域そのものを包括的に禁止はしていませんnote.com(ただし飛行させたい場合は国防総省等の許可が別途必要note.com)。こうした違いから、日本は市街地におけるドローン飛行のハードルが非常に高い国の一つでした。ただし2022年のレベル4解禁で理論上は市街地飛行も可能となったため、今後運用実績が増えれば他国並みに都市部でドローンが見られるようになる可能性があります。
-
操縦者資格要件: かつて日本はドローン操縦者に対し国家資格を課しておらず、民間団体の技能講習修了証があれば許可申請時に有利になる程度でした。その意味では**「無免許でも飛ばせる」範囲が広く、この点だけ見れば規制が緩い側面もありました****dronelife.com****dronelife.com。実際、2018年時点の国際比較では「日本・中国・ドイツ以外の国は何らかの操縦者認証を要求している」とされ、日本は免許不要組に入っていましたdronelife.com。しかし現在は前述のとおり国家ライセンス制度が導入され、レベル4相当の高リスク飛行には一等資格が必須となりました。米国では商業利用時にパイロット証明が必要ですが筆記試験のみで取得でき実地試験は無く、欧州でもオンライン試験主体で比較的取得容易な資格です。一方日本の一等・二等資格は学科・実技試験を伴い取得に数十万円の費用や講習時間を要するため、資格要件としては国際的に見ても重い負担です。もっとも、日本は免許を必要とする場面を「特定飛行」に限定しています。日常的な目視内・日中飛行だけであれば無資格で飛ばせる点は維持されています。このように「無資格で飛ばせる範囲は広いが、一旦高度な飛行をしようとすると厳格な資格が必要」**という二層構造になったのが現在の日本と言えます。
-
運用ルールの柔軟性: 米国やEUはリスク許容度に応じて柔軟にルール設定しているのに対し、日本は長らく画一的に禁止・許可を運用してきました。例えば米国では重量区分を細分化せず一律55ポンド未満で規制していますが、その代わり第三者上空飛行に関して機体の危険性(運動エネルギー)に応じ4つのカテゴリーを設け、小型軽量ドローンなら人的リスクが低いとして群衆上空でも飛行可能としましたreamo.nedo.go.jp(2021年改正の新ルールによる)。EUでもC0クラス(250g未満)は人の上を飛んでもよい、といったルールです。日本は現在でも重量による運用区分はなく、極端に言えば100gでも10kgでもDID上空は禁止という一律制です。もっとも、新設の機体認証制度では安全な機体であることを証明すれば第三者上空を許可する道を開けており、この点は米国の「カテゴリー認定」や欧州の「クラス認証」に相当します。したがって、日本もようやくリスクに応じた運用緩和ができる仕組みを導入した段階と評価できます。 以上を総合すると、日本のドローン規制は**「安全最優先の慎重な姿勢」が色濃く、特に市街地や人がいる場所での飛行禁止、厳しい登録管理といった面で世界的に見ても厳格な部類に入ります****pilotinstitute.com****www.k-dots.jp。その反面、一定の低リスク飛行については無資格で可能であったり、他国で必要な保険強制加入が日本では義務ではない等、緩い部分も存在しますdronelife.comdl.ndl.go.jp。しかし昨今の制度改革で日本は国際標準に追いつく形で免許制やリモートIDを導入し、高度な飛行も解禁しました。これは規制強化であると同時に規制緩和でもある点が重要です。つまり、日本は安全確保の網を狭く張りつつ、その代わり技術的条件を満たせば新たな活用を許容する方向に舵を切った**といえます。
今後、日本の規制の厳しさは運用次第で変化し得ます。例えば許可・承認手続きの迅速化やオンライン化が進めば、実質的な負担は軽減するでしょう。また他国の動向次第では、更なる規制緩和(例えば小型機の登録閾値を欧米並みの250gに引き上げる等)の議論も出てくる可能性があります。現状では、日本は安全面でリードしつつも実証実験の蓄積が他国より少ないため、慎重さと実績不足ゆえに「厳しい」と映る部分があると言えます。国際的には米国・欧州が商用運用で先行していますが、日本も制度を整えた今後数年で運用実績を蓄積すれば、厳しすぎる部分は見直されていく余地があるでしょう。
日本におけるドローン活用促進のための規制のあり方と政策提案
最後に、日本国内でドローンを有効活用し産業発展につなげるために望ましい規制の方向性と政策提案を示します。
-
リスクに応じた段階的な規制運用: 今回導入されたカテゴリー別の運用をさらに洗練させ、リスクが低い飛行には極力自由度を与えるべきです。具体的には、例えば250g未満の超小型ドローンについては人口集中地区であっても簡単な届け出のみで飛行可能にするなど、欧米並みの小型機優遇策を検討してはどうかということですdronelife.comdronelife.com。現在、日本でも100g未満は航空法対象外ですが、更に実用性のある200g級まで枠を広げれば、ホビーのみならず商用でも安全な小型機の開発・利用が進むでしょう。
-
許可・承認手続の効率化(ワンストップ化): ドローンの申請手続きが煩雑・審査に時間がかかる点は事業者からも指摘されています。国土交通省が開設した「無人航空機飛行許可申請サイト(DIPS)」や「ドローン情報基盤システム(FISS)」はその第一歩ですが、さらなる自動化・迅速化が望まれます。米国のLAANCのように、条件を満たす標準的な飛行は即時にオンライン許可が降りる仕組みwww.aloft.aiwww.dronepilotgroundschool.comを整備すれば、事業のスピード感が増し違反抑止にもつながります。日本でも有人地帯での補助者付き目視外飛行(レベル3)程度であれば、反復する定常業務について包括許可を与えるなど、運用改善が可能と思われます。
-
「ドローン特区」や実証実験の拡充: 新たなドローン活用(例:都市部での配送網構築や夜間警備飛行など)は、いきなり全国展開するのではなくまず限定エリアで試行するのが現実的です。韓国ではドローン特別自由化区域を指定し、その区域内では一部規制を免除してテスト飛行を可能にする制度がありますombudsman.kotra.or.kr。日本も国家戦略特区を活用した実証が行われてきましたが、今後は地域を限定した規制緩和ゾーンを継続的に公募・指定し、自治体や企業が連携して新サービスを試せる環境を作るべきです。そこで得られたデータをもとに、安全が確認できた運用について全国規模で規制緩和していく段階的アプローチが有効でしょう。
-
技術開発と規制の連携(レギュラトリーサンドボックスの活用): ドローン関連技術(衝突回避システム、耐障害通信、AI制御等)は日進月歩です。規制もそれら最新技術を取り入れた性能ベース基準に移行する必要があります。例えば、現在は一律「目視内」と規定している部分も、高性能な衝突回避センサーを搭載していれば目視外でも同等の安全が担保できる可能性があります。こうした技術を積極的に評価し、条件付きで規制を免除する試験運用(レギュラトリーサンドボックス制度)を活用することが重要です。日本政府も2020年頃から新技術実証の制度を導入していますが、ドローン分野でも官民連携で最新技術の社会実装を進め、技術の進歩に合わせて規制をアップデートしていくフレキシビリティが求められます。
-
運用インフラ整備(UTMの導入): ドローンの安全な大量運用には、有人機の管制とは別に**無人機トラフィック管理(UTM)**の仕組みが不可欠です。欧州ではU-space制度の施行が進み、米国でもNASAとFAAがUTM試験を重ねています。日本も早期に全国統一のUTMプラットフォームを整備し、リアルタイムで飛行経路管理や他機・地上リスクとの情報共有ができる環境を構築するべきですdl.ndl.go.jp。UTMが機能すれば、人の目視や個々の承認に頼らずとも自動的に安全を担保できるようになり、規制を緩和しつつ実効性ある監視を実現できます。
-
安全文化と人材育成の醸成: ハード面の規制緩和だけでなく、ソフト面での取組も重要です。ドローン先進国では操縦者コミュニティや産業団体が自主的なガイドライン整備や啓蒙活動を行っています。日本でも国交省や自治体と連携して安全講習や競技大会を開催し、操縦者の技量向上とモラル向上を図ることが望まれます。免許制が始まりましたが、単に資格を与えるだけでなく継続教育や情報共有の仕組みを作り、安全文化を醸成することが結果的に産業の持続的発展につながります。併せて、ドローンに対する社会の理解を深める広報や、事故発生時の原因究明・公表の徹底など、信頼を築く取り組みも欠かせません。
-
産業支援策: 規制とは直接関係ありませんが、産業振興のための政策として補助金・助成金や規制緩和のための対話も重要です。日本政府は「空の産業革命」に向けたロードマップを策定し、2022年までにレベル4解禁という目標を達成しましたdrone-journal.impress.co.jp。次はそれを具体的なビジネスに結びつける段階です。中小企業やスタートアップがドローンを導入しやすいよう設備投資補助や実証支援を拡充するとともに、運用での課題(騒音対策やバッテリーリサイクル等)の解決に向けた研究開発投資も後押しすべきです。またドローン製造面でも、国内メーカーが海外勢と競争できるよう認証の国際標準化や海外実証への参加支援など政府レベルの支援策が求められます。 以上の提案により、日本のドローン規制は「安全と革新の両立」を図りつつ、一層の合理化・柔軟化が期待できます。諸外国の事例から学びつつ、日本の事情に合った最適解を追求することで、ドローンのポテンシャルを最大限に引き出し、社会課題の解決や新産業の創出につなげていくことが重要でしょう。【参考文献】
-
国土交通省航空局「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」
-
DRONE PRESS「日本はドローン整備が遅い?各国のドローン法について徹底比較」(2021年4月)www.drone-press.jpwww.drone-press.jp
-
Kanden DOTs「日本と海外とのドローン規制を比較してみました!!」(2024年8月)www.k-dots.jpwww.k-dots.jp
-
Pilot Institute「How do Drone Laws in the U.S. Compare to Other Countries」(2022年)pilotinstitute.compilotinstitute.com
-
Dronelife「How U.S. Drone Regulations Stack Up Against the World」(2018年)dronelife.comdronelife.com
-
国立国会図書館調査報告「【中国】ドローン飛行管理暫定条例の制定」(2024年2月)dl.ndl.go.jpdl.ndl.go.jp
-
国立国会図書館調査報告「【韓国】ドローンの商業利用の促進等に係る法改正」(2018年1月)dl.ndl.go.jpdl.ndl.go.jp
-
NNA Global Navi「各国のドローンに関する法規制の概要」(2023年4月)nnaglobalnavi.comnnaglobalnavi.com
-
インプレス ドローンジャーナル「2022年度レベル4解禁、ドローン物流の現状と今後の展望」(2021年9月)drone-journal.impress.co.jpdrone-journal.impress.co.jp
-
その他、内閣官房・総務省公表資料、海外ニュース記事 など