了解しました。2015年以降の自治体システム標準化に関する国の方針や制度、特に運用経費3割削減に関連する内容を時系列で整理して調査します。調査が完了しましたら、詳細な情報をお伝えしますので、お待ちください。
2015~2017年:自治体システム改革の方針策定期
2015年(平成27年)、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太方針2015)が閣議決定され、地方行政サービス改革の推進が盛り込まれましたwww.pref.okayama.jp。総務省は同年8月に各自治体へ「地方行政サービス改革の推進に関する留意事項」を通知し、業務のBPR(業務プロセス改革)やICT活用による業務見直し、自治体情報システムのクラウド化拡大などを強く促しましたwww.pref.okayama.jp。これにより、自治体システムの共同利用や標準化による効率化が改革の柱の一つとして示され、将来的な運用経費削減の方向性が打ち出されました。
その後の骨太方針等でも一貫して自治体システムの効率化が掲げられます。例えば2017年(平成29年)の骨太方針では、「自治体情報システムのクラウド化を契機に自治体の業務フローの標準化を検討し、自治体間の事務の効率化を図る」と明記されましたwww.cas.go.jp。つまり、クラウド導入と合わせて業務を標準化し、重複投資の削減や行政サービスの効率向上を目指す国の方針がこの時期までに固まっています。
2018~2019年:標準化計画の具体化と「運用経費3割削減」目標の提示
2018年、総務省の有識者会議「自治体戦略2040構想研究会」第二次報告(7月)において、人口減少で職員数が先細りする2040年を見据え「自治体基幹業務システムの標準化」を進める必要性が提言されましたnote.com。自治体ごとの個別開発・運用を改め、システムを統一することで職員の負担軽減や業務効率化を図る狙いですnote.com。続いて2019年5月には「スマート自治体研究会報告書」にて、自治体システム標準化による業務負担・コスト軽減の必要性が強調されましたnote.com。こうした議論を受け、同年8月に「自治体システム等標準化検討会」(第1回)も開催され、自治体システム標準化に向けた具体的検討作業が本格的に始まりますnote.com。
国の正式な計画にも標準化とコスト削減目標が明示されました。2019年12月に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」では、自治体の情報システムについて「2025年度末(令和7年度末)までの標準準拠システムへの移行完了後、2018年度比で少なくとも3割の運用経費削減を目指す」ことがKPIとして掲げられましたgdx-times.com。つまり、自治体システムを統一・標準化することで運用経費を3割削減するという明確な数値目標が、この時点で国の計画に組み込まれていますgdx-times.com。この「3割削減」は標準化施策の根拠となる重要目標であり、以降の制度設計や財政措置の根幹となりました。
2020年:デジタル改革の加速と標準化法制化の準備
2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大は行政システムの課題を顕在化させました。特別定額給付金など各種給付金のオンライン申請処理で、国と自治体システムの不整合やオンライン手続の不具合により支給が滞る事態が多発し、行政のデジタル化の遅れが露呈しましたgdx-times.com。このコロナ禍での教訓により、「国と地方のデジタル基盤の抜本改善」が急務と認識され、自治体システム標準化の取組は一層後押しされましたgdx-times.com。
同年9月、政府は「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」を開催し、自治体システム標準化・ガバメントクラウド構想と、ネットワーク・データ連携基盤の整備を一体的に検討しましたnote.com。続く11月にはデジタル改革関連法案の検討作業部会で中間とりまとめが行われ、地方自治体システム標準化法制の骨子やガバメントクラウドの提供方針が示されますnote.com。ここでは、クラウド基盤を国が用意し、各自治体がそれを利用できるようにする役割分担や、クラウド移行時期の目標(概ね2025年度)などが議論されましたnote.com。
そして2020年12月、政府は「デジタル・ガバメント実行計画」を改定(閣議決定)し、マイナンバー制度強化や自治体システム標準化を含むデジタル基盤改革の工程を明確化しましたnote.com。この中で、先の「2018年度比3割コスト削減」の目標も再確認され、デジタル改革関連法案に標準化の内容を盛り込む方針が固まりました。
2021年:標準化法の成立・施行とデジタル庁発足
2021年は制度面で大きな転換点となりました。まず同年5月、「デジタル改革関連法」が国会で成立し、その一つとして「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(標準化法)が制定されましたnote.com。この法律により、自治体の基幹業務システムを国が定める統一基準に適合させることが義務化されましたgdx-times.com。標準化法は同年9月1日に施行され、これによって全ての地方公共団体は2025年度までに基幹系システムを統一基準に沿った「標準準拠システム」へ移行する法的義務を負うこととなりましたgdx-times.com。この法律の目的は、自治体ごとに異なるシステムを標準化することで、制度改正時のシステム改修負担や維持管理コストを軽減し、クラウドによる共同利用を円滑化するとともに、優れた住民サービスの全国普及を容易にすることにありますgdx-times.com。
また2021年9月にはデジタル庁が発足し、自治体DX・システム標準化も含めた政府全体のデジタル政策推進の司令塔となりました。標準化法の所管は総務省とデジタル庁が連携して担い、各府省が担当分野の標準仕様策定を進める体制が整えられました。さらに2021年12月には、新たに制定されたデジタル社会形成基本法に基づき「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(初版)が閣議決定され、国・地方の情報システム整備について「原則ガバメントクラウド活用」とする方針や、標準化・ガバクラ・公共サービスのトータルデザインを一体的に推進することが明記されていますnote.comnote.com。これらにより、自治体システム標準化は法律・計画の両面から実行段階へ移行しました。
2022年:標準仕様書の策定、基本方針の閣議決定、財政支援策
2022年には標準化施策の具体化と支援策の整備が進みました。標準化法に基づき、同年1月には政令(令和4年政令第1号)が施行され、標準化の対象となる自治体事務20分野(住民記録、税、国保、介護、福祉、戸籍等)が正式に特定されましたgdx-times.com。各担当府省はそれぞれの分野についてシステムの標準仕様書を作成し、令和4年夏までに全20業務の標準使用要件の策定・公表を完了しましたwww.pref.hokkaido.lg.jp。例えば総務省は住民記録・税・選挙等、厚労省は国保・介護・障害福祉等、こども家庭庁は児童関連、といった形で標準仕様書を公開し、全国の自治体とベンダーに対し新システム開発・移行の共通仕様を提示していますdx-consultant.co.jpdx-consultant.co.jp。これにより、ベンダーロックインの回避や自治体間で統一仕様のシステムを導入する準備が整いました。
また同年6月には政府の重点計画(デジタル社会形成重点計画)が改定され、自治体システム標準化・ガバメントクラウド移行の工程が盛り込まれています。計画では2025年度を移行完了の目標時期と位置づけ、各自治体が現行システムの更改計画を見直し、遅くとも令和7年度(2025年度)までに標準準拠システムへ移行するよう求められましたwww.pref.hokkaido.lg.jp。
そして2022年10月7日、政府は「地方公共団体情報システム標準化基本方針」を閣議決定しましたwww.digital.go.jp。この基本方針は標準化法に基づき策定されたもので、自治体基幹業務システムの統一・標準化推進に関する基本事項を定めていますwww.digital.go.jp。基本方針では改めて、標準化の目的として (1)制度改正時の個別対応負担の軽減、(2)クラウド活用促進、(3)優れた取組の全国普及支援 などを掲げるとともに、数値目標として「標準化対象事務システムの運用経費について、標準準拠システム移行完了後に2018年度比3割以上削減を目指す」ことが明記されましたwww.digital.go.jp。この目標実現に向け、国もデジタル原則に基づく業務改革(BPR)等に取り組み環境整備を行うとされていますwww.digital.go.jp。基本方針はまた、**2023年度~2025年度を「移行支援期間」**と位置づけ、デジタル庁・総務省が自治体の円滑な移行を積極的に支援する方針を示していますwww.pref.hokkaido.lg.jp。
標準化の財政支援策もこの時期に整いました。国は令和4年度、第2次補正予算等を通じて地方公共団体情報システム機構(J-LIS)内にデジタル基盤改革支援基金を創設し、自治体の標準化対応費用を支援していますwww.mhlw.go.jpwww.mhlw.go.jp。この基金は複数年度にわたり利用可能な時限措置で、現行システムの調査分析、標準システムへの移行計画策定、データ移行や文字コード統一作業等に要する経費を幅広く補助するものですwww.mhlw.go.jpwww.mhlw.go.jp。補助率は10分の10(100%補助)とされており、自治体は自己負担なく標準化準備を進めることができますwww.tkfd.or.jp。政府はこの基金により約2,000億円規模の財源を確保し、2025年度末の全自治体移行完了に向けた集中的支援を行っていますgdx-times.com。さらに総務省は標準化手順書(令和5年1月版)を作成して自治体に配布し、移行作業の進め方や留意点をガイドしていますwww.mhlw.go.jp。併せて「ガバメントクラウド早期移行団体検証事業」(実証事業)を募集し、意欲的な自治体を対象に先行的なクラウド移行の検証・ノウハウ共有も進められました(令和4~令和5年度に計3回公募)www.digital.go.jp。
2023年~現在:移行の本格化と進捗状況、最新動向
2023年(令和5年)以降、全国の自治体で標準準拠システムへの移行プロジェクトが本格化しています。多くの自治体がベンダー選定や現行データ移行準備に着手し、国の基金を活用しながら移行計画の策定や検証作業を進めています。デジタル庁・総務省は各自治体の進捗状況を継続的に調査・フォローしており、移行計画の遅れや課題がある団体には個別ヒアリングや技術支援を実施していますwww.digital.go.jp。最新の調査(2024年10月末時点)によれば、標準化対象のシステム計34,592件のうち6.3%にあたる2,165件が「特定移行支援システム」(期限内移行にリスクがあるシステム)と判定されていますwww.digital.go.jp。自治体数では全1,788団体中402団体(約22.5%)が何らかの特定移行支援システムを抱えておりwww.digital.go.jp、これらについてデジタル庁・総務省が個別支援を強化している状況です。反対に言えば、約78%の自治体では標準化移行のめどが立っているか実施中であり、国の目標である2025年度内の統一システム移行完了に向けて概ね計画通り進んでいます。デジタル庁は2024年12月に基本方針の改定を行い、進捗に応じた施策の微調整やクラウド運用体制に関する事項をアップデートしましたwww.digital.go.jp。また標準仕様書も技術的知見の更新に合わせ随時改定されており(最新版v2.x系)、自治体・ベンダーへの周知が図られていますwww.digital.go.jp。
政府は引き続き計画期間内での目標達成を目指し、財政面・技術面から自治体を支援していく方針です。2025年度末までに全自治体が標準準拠システムへの移行を完了し、以降は運用コスト3割削減という成果を住民サービス向上や行政運営の効率化へとつなげていくことが期待されていますgdx-times.comwww.digital.go.jp。標準化による重複開発コストの削減・ベンダーロックインの解消、ガバメントクラウド活用による高水準のセキュリティ確保と災害時も含めた安定運用、そしてオンライン行政サービス拡充による住民利便性の向上——こうした効果を最大化しつつ、自治体DXの推進が今後も継続されていく見通しです。各種補助制度・ガイドラインを活用しながら、国と自治体が協力してデジタル基盤の強化と運用経費削減の実現を図っています。
参考資料(時系列順):
- 2015年6月骨太方針2015・総務省通知www.pref.okayama.jp
- 2017年骨太方針(一部抜粋)www.cas.go.jp
- 2018年7月 自治体戦略2040構想研(二次報告)note.com
- 2019年5月 スマート自治体研究会報告書note.com
- 2019年12月 デジタル・ガバメント実行計画(閣議決定)gdx-times.com
- 2020年 コロナ禍での課題顕在化gdx-times.com
- 2021年5月 デジタル改革関連法(標準化法)成立note.com
- 2021年9月 標準化法施行・デジタル庁発足gdx-times.com
- 2021年12月 デジタル社会形成重点計画note.com
- 2022年夏 標準仕様書公表www.pref.hokkaido.lg.jp
- 2022年10月 基本方針 閣議決定www.digital.go.jpwww.digital.go.jp
- 2022年 財政支援策(基金創設)www.mhlw.go.jpwww.tkfd.or.jp
- 2024年10月 進捗状況(特定移行支援システム調査)www.digital.go.jp