ノジマによるストリートHDの買収が正式に開示されたので、改めて内容を評価・分析する。
1. 買収の概要(開示情報を基に整理)
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取得対象企業:
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株式会社ストリートホールディングス(ストリートHD)
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取得方法:
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持株会社である株式会社BCJ-59の全株式を取得することで、ストリートHDを完全子会社化。
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取得価額(総額):
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取得総額:約126.4億円
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株式価値:約70億円
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純有利子負債:約55億円
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アドバイザリー費用:約1.4億円
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財務情報(2024年2月期):
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連結売上高:約247億円(前年比やや減少)
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営業利益:約4.58億円(前年10.35億円から大幅減少)
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経常利益:約12.26億円(前年10.17億円から増加)
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純利益:約25.33億円(前年6.73億円から大幅増益)
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総資産:約152億円、純資産:約38億円(自己資本比率 約25%)
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買収日程:
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株式譲渡実行日:2025年4月2日(予定)
2. 再評価(開示を踏まえた分析)
(1)財務面の再評価
- ストリートHDの直近業績は、営業利益が前年比大幅減少(10.35億円→4.58億円)しているが、経常利益は逆に増加(10.17億円→12.26億円)、純利益は大幅増益(6.73億円→25.33億円)となった。
- 営業利益の低下と経常利益・純利益の増加は特別利益または営業外収益(投資売却益や税務処理等)が影響した可能性が高く、継続的な収益性はやや不透明。
- 自己資本比率は約25%であり、有利子負債が55億円あるため、財務的な安定性はやや低い水準となっている。
(2)買収価額の妥当性
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EBITDA倍率評価
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仮に営業利益(4.58億円)に減価償却を年間約1.4億円加算すると、EBITDAは約6億円。
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企業価値(EV)=株式価値70億円+純有利子負債55億円=125億円で評価すると、EBITDA倍率は約20.8倍となり高めである。
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PER評価
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純利益25.33億円に対し、株式価値70億円を用いたPERは約2.8倍と非常に低い水準にある。
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しかし、この利益には一過性の特別利益が含まれる可能性があり、安定利益で評価する必要がある。
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前期純利益6.73億円を基準にすると、PERは約10.4倍で適正なレンジである。
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PBR評価
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純資産38億円に対する株式価値70億円のPBRは約1.8倍で適正範囲内(買収プレミアムとして妥当)。
(3)事業面・シナジー面の再評価
- ノジマは、ストリートHDの保有するマーケティング技術を利用し、販促費用の効率化を図ることを目的としている。
- 特にストリートHDの強みであるテレビ通販およびデジタルマーケティング支援のノウハウを、自社の家電販売・通販事業強化に活かすシナジーは現実的である。
- また、ストリートHDが抱えるD2C事業のノウハウを活用し、新たな商品企画や販売チャネル開拓にも期待ができる。
3. 結論(総合評価)
- 今回の開示により明らかになった財務内容から、ストリートHDの業績には直近で営業利益の急減など若干のリスクがあるが、経常利益の安定性や純利益の増加要因を考えると、収益力は維持されている可能性が高い。
- 買収価額については、EBITDA倍率ベースでは割高に見えるが、正常な利益水準を用いたPER評価やPBR評価では妥当な範囲内にある。
- 事業上のシナジーを踏まえると、ノジマにとってストリートHDの買収は、マーケティング能力の向上、販促効率化、自社の通販事業展開に大きなプラス効果をもたらす可能性が高く、戦略的価値を考えれば妥当性がある買収と評価できる。
最終的な再評価のまとめ
- 財務面の評価:△(直近業績にリスクあり)
- 価格妥当性評価:〇(全体的に妥当な水準)
- 戦略・シナジー評価:◎(ノジマにとって戦略的価値が高い) 結論として、ノジマによるストリートHDの買収は、妥当性・戦略性ともに高いと判断される。