NVIDIA G-Syncの基本概念とFreeSyncとの比較

NVIDIA G‑Sync の基本コンセプト

1. なぜ必要か — 固定リフレッシュの弱点

PC モニターは本来 60 Hz や 144 Hz など「固定周期」で画面を書き換えます。GPU が出力するフレームレート (FPS) はゲームの負荷で常に変動するため、

  • V‑Sync OFF : GPU が準備でき次第フレームを送る → 上下でフレームが混在し「ティアリング(横割れ)」が発生。
  • V‑Sync ON : ティアリングは消えるが、GPU は次のリフレッシュ開始までフレームを溜め込むため入力遅延とフレーム落ち(スタッター)が増える。 pcmonitors.info

2. 基本原理 —「モニター側を可変速にする」

G‑Sync は モニターのリフレッシュレートを GPU 側に合わせて動的に変える可変リフレッシュレート (VRR) 技術です。
GPU が新しいフレームを描き終えた瞬間に「いま描き替えてくれ」と信号を送り、モニターは 1 Hz 〜 最大リフレッシュ上限まで好きなタイミングで書き換えます。これにより FPS と Hz が常に一致し、

  • ティアリングなし(フレームを途中で切らない)
  • スタッターなし(フレーム保持時間が均一)
  • V‑Sync ON 相当の滑らかさながら 入力遅延は V‑Sync OFF に極めて近い 1–2 ms 差 に抑制 が同時に得られます。pcmonitors.info

3. モニター側の仕組み

従来は NVIDIA 専用 G‑Sync モジュール(独自スケーラー+高速メモリ)を筐体に組み込むことで、

  • 1 Hz 単位の広い VRR レンジ
  • 可変オーバードライブ(ゴースト抑制)
  • ULMB / ULMB 2(ストロボ式の超低残像)
  • Reflex Analyzer などの遅延計測機能 を一括提供していました。www.nvidia.com

4. 認証レベルと互換性

n2025 年現在、NVIDIA は 3 つのロゴで機能レベルを区別しています。www.nvidia.com

ロゴモジュール主な特徴想定ユーザー
G‑Sync Ultimateあり上記フル機能 + HDR(高輝度/広色域)ハイエンド
G‑Sync (従来型)あり広 VRR + 可変 OD + ULMBeSports/プロ志向
G‑Sync Compatibleなし (VESA Adaptive‑Sync 認証)基本的な VRR を NVIDIA ドライバで検証コスパ重視

5. 最近の動向 — モジュール不要化へ

n2024 年夏、NVIDIA は MediaTek 製スケーラーに G‑Sync 機能を統合 する提携を発表。専用モジュールなしでも Reflex・Pulsar(最新ブラー低減技術)などフル機能を実装できるモニターが AOC・Acer・ASUS から登場しています。コストと製品数の両面で普及が加速する見込みです。www.theverge.com

6. 必要環境

  • GPU : GeForce GTX 650 Ti Boost 以降(最新ドライバ必須)pcmonitors.info
  • 接続 : DisplayPort 1.2+ が基本。HDMI 2.1 でも VRR 対応モデルが増加。
  • OS : Windows 10/11 または Linux (Wayland/X11) で NVIDIA プロプライエタリドライバ使用。

7. メリットと注意点

メリット

  • ティアリング・スタッターの同時解決
  • V‑Sync 比で低遅延
  • FPS が VRR 下限を下回っても LFC (Low Framerate Compensation) で滑らかさ維持 注意点
  • FPS がモニター上限を超えると VRR が外れ再びティアリング(上限‑3 fps などにフレームリミット推奨)pcmonitors.info
  • G‑Sync Ultimate/モジュール搭載機は価格が高め
  • NVIDIA GPU 専用機能(Compatible モニターは AMD GPU でも VRR 自体は機能するが可変 OD 等は無効)

まとめ

G‑Sync は「GPU が描き終えた瞬間にモニターも描き替える」というシンプルな発想で、固定リフレッシュによる根本的な問題—ティアリングとスタッター—を同時に解消する VRR 技術です。専用モジュール方式からソフト/スケーラー統合方式へ拡張が進み、2025 年現在は 性能重視の Ultimate とコスト重視の Compatible の両極で幅広い選択肢が用意されています。特徴と用途を理解して、自分の GPU 性能・プレイスタイル・予算に合ったディスプレイを選ぶとよいでしょう。FaviconFaviconFaviconSources